ただ見上げるより この手を伸ばしてみたくなるだけ (ポコアポコ/カヒーナムジカ)
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 ブログ開設当初からの冒頭の言葉は、ブギーポップに出てくる、私の最も好きな言葉です。
 字数制限にひっかかって全部載せられませんでしたが、もともとは以下のような文でした。


 しかし、その意志だけは残る。たとえそれがどんなに悪いことにしか見えなくても、何かをしようとしたこと、それに向かおうとした真剣な気持ち、そういうものは必ず他の者達の中に残る。その者たちだって結局は途中かも知れない。だがそのときは、さらにその次に伝わる。そして――誰にわかる? その中の誰かは本当に世界の中心にたどりつくかも知れない……  (上遠野浩平「夜明けのブギーポップ」より)


 ここから先、何故この言葉が私が最も好きなのか、何故ブギーポップが好きなのかという話をしたいと思いますが、ネタバレが含まれていますので注意して下さい。
 ブギーポップが好きなのは、その中で描かれている世界観が、私のそれと共通だったからでしょう。
 しかし、そのことに気がつくにはしばらく時間がかかりました。
 そもそも進化した人類「MPLS」だとか、それを駆逐しようとする、正体不明でやたらとでかくて捉えどころのない「統和機構」だとか、統和機構が作った人造人間だとか、陳腐も良いところです。
 霧間誠一のもったいぶって装飾過剰でそのくせ大したことを言っていない言葉も嫌いでした。
 最初のころは、そういった安っぽいものさえなければ良い話だと思っていたのです。

 それでも読んでいたのは、一つの事件を複数の視点から、しかも何度も何度も語ってゆく手法が、私の世界観とぴったり一致したから、というのはあります。
 そう、世界は無数の主観の集合体でできていて、客観など存在しない。
 三人称で、あるいは神の視点でばかり語られる物語ばかり溢れている世界に、「現実はそうじゃない!」と叫び出したい衝動を、もうずっと長いこと抱えながら私は生きてきたのです。
 だから、少しぐらいの陳腐さは我慢することができたのです。

 ところが、私が「陳腐なもの」として軽蔑していたもの、それが実はブギーポップのとても重要なファクターであり、その真髄ですらあったのです。
 そのことに気がついたのは「夜明けのブギーポップ」でした。
 そして霧間誠一。
 彼はこう言います。
 「“現在”の全てが“未来”の出現に対抗しているのだ」

 そう、決して「進化した人類」は空想の産物なんかじゃなかったのです。今この世界の中に、現実に存在している人々なのです。彼等は――再び霧間誠一の言葉を引用すれば、「どこか今の人間よりも、“先に行っている”」のです。
 そして、その“先に行っている”人間達に対して、世論とか評判とか常識とか、そういった正体不明でやたらとでかくて捉えどころのない他の人間たちの無意識としての集合体――統和機構――が、よってたかって攻撃をしかけ、消し去ろうとしているのです。
 だから進化した人類は世界の敵であり、そうなるより他なかったのです。

 そのことに気づいて私はハッとしました。
 かつて「全世界を敵に回しても戦い抜く」と誓い、本当の静寂を求め偽りの安寧を打ち砕くため、たった二人でクラスの全員と戦いを始めた私は、つまるところ「世界の敵」ではなかったか?
 あの時、私の叫びを黙殺しようとした連中の何と多かったことか。全ての原因を私達のせいにし、他のクラスの生徒を正しいと断定した奴らの何と多かったことか。
 常識、世論、評判、そういったものは全て私に牙を剥いて、襲い掛かって来たではないか?
 ――そう、私は世界の敵なのだ!

 そして今、私は相手と形を変えて、世界と戦い続けているのではないか?
 中学の時の戦いには勝利し、私は生き残りました。
 それから10年近くの時を経て、統和機構は再び私の前に姿を現したのです。
 ならば大いに結構。私は世界の敵だ。


 その一方で、私は本当は知っていました。
 私は私が期待できるほど強くない。
 私は武運つたなく倒れてしまうかも知れない。
 私が倒れた後、私の存在したことは全て無意味になってしまうのでしょうか?
 敗者には、戦った事実すら認められないと?

 否。
 人は人の中に爪痕を残すのです。たとえ負けたとしても、中途だったとしても、人が戦ったこと、その事実は誰かのどこかに残るのです。
 そしてその誰から誰かへと溶け出し、混ざり合い、敵であるはずの世界とすら融合して、千年の時を超えたって空の中で脈打ち続けるのです。
 それこそ、人の生きていた証。私の戦いの栄光。敗北は、死は、決して無意味ではないのです。

 そうやって私が、なにやら大きなものと戦いを始める覚悟を固めたころ、私は「夜明けのブギーポップ」を読みました。
 読んで、私は自らが世界の敵であることを悟りました。
 さらに期せずして霧間誠一はこういったのです。

 「そして――誰にわかる? その中の誰かは本当に世界の中心にたどりつくかも知れない……」

 その言葉は、私の心の中にあった信念を、まさに正確に言い当てたものだったのです。



 …自信過剰? それも結構。なぜなら私は「世界の敵」なのだから。


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 ブギーポップが好きなのは、その中で描かれている世界観が、私のそれと共通だったからでしょう。
 しかし、そのことに気がつくにはしばらく時間がかかりました。
 そもそも進化した人類「MPLS」だとか、それを駆逐しようとする、正体不明でやたらとでかくて捉えどころのない「統和機構」だとか、統和機構が作った人造人間だとか、陳腐も良いところです。
 霧間誠一のもったいぶって装飾過剰でそのくせ大したことを言っていない言葉も嫌いでした。
 最初のころは、そういった安っぽいものさえなければ良い話だと思っていたのです。

 それでも読んでいたのは、一つの事件を複数の視点から、しかも何度も何度も語ってゆく手法が、私の世界観とぴったり一致したから、というのはあります。
 そう、世界は無数の主観の集合体でできていて、客観など存在しない。
 三人称で、あるいは神の視点でばかり語られる物語ばかり溢れている世界に、「現実はそうじゃない!」と叫び出したい衝動を、もうずっと長いこと抱えながら私は生きてきたのです。
 だから、少しぐらいの陳腐さは我慢することができたのです。

 ところが、私が「陳腐なもの」として軽蔑していたもの、それが実はブギーポップのとても重要なファクターであり、その真髄ですらあったのです。
 そのことに気がついたのは「夜明けのブギーポップ」でした。
 そして霧間誠一。
 彼はこう言います。
 「“現在”の全てが“未来”の出現に対抗しているのだ」

 そう、決して「進化した人類」は空想の産物なんかじゃなかったのです。今この世界の中に、現実に存在している人々なのです。彼等は――再び霧間誠一の言葉を引用すれば、「どこか今の人間よりも、“先に行っている”」のです。
 そして、その“先に行っている”人間達に対して、世論とか評判とか常識とか、そういった正体不明でやたらとでかくて捉えどころのない他の人間たちの無意識としての集合体――統和機構――が、よってたかって攻撃をしかけ、消し去ろうとしているのです。
 だから進化した人類は世界の敵であり、そうなるより他なかったのです。

 そのことに気づいて私はハッとしました。
 かつて「全世界を敵に回しても戦い抜く」と誓い、本当の静寂を求め偽りの安寧を打ち砕くため、たった二人でクラスの全員と戦いを始めた私は、つまるところ「世界の敵」ではなかったか?
 あの時、私の叫びを黙殺しようとした連中の何と多かったことか。全ての原因を私達のせいにし、他のクラスの生徒を正しいと断定した奴らの何と多かったことか。
 常識、世論、評判、そういったものは全て私に牙を剥いて、襲い掛かって来たではないか?
 ――そう、私は世界の敵なのだ!

 そして今、私は相手と形を変えて、世界と戦い続けているのではないか?
 中学の時の戦いには勝利し、私は生き残りました。
 それから10年近くの時を経て、統和機構は再び私の前に姿を現したのです。
 ならば大いに結構。私は世界の敵だ。


 その一方で、私は本当は知っていました。
 私は私が期待できるほど強くない。
 私は武運つたなく倒れてしまうかも知れない。
 私が倒れた後、私の存在したことは全て無意味になってしまうのでしょうか?
 敗者には、戦った事実すら認められないと?

 否。
 人は人の中に爪痕を残すのです。たとえ負けたとしても、中途だったとしても、人が戦ったこと、その事実は誰かのどこかに残るのです。
 そしてその誰から誰かへと溶け出し、混ざり合い、敵であるはずの世界とすら融合して、千年の時を超えたって空の中で脈打ち続けるのです。
 それこそ、人の生きていた証。私の戦いの栄光。敗北は、死は、決して無意味ではないのです。

 そうやって私が、なにやら大きなものと戦いを始める覚悟を固めたころ、私は「夜明けのブギーポップ」を読みました。
 読んで、私は自らが世界の敵であることを悟りました。
 さらに期せずして霧間誠一はこういったのです。

 「そして――誰にわかる? その中の誰かは本当に世界の中心にたどりつくかも知れない……」

 その言葉は、私の心の中にあった信念を、まさに正確に言い当てたものだったのです。



 …自信過剰? それも結構。なぜなら私は「世界の敵」なのだから。

【2006/01/13 01:08】 | 拾い物
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